まず脂肪と肥満タイプを知ろう
カラダの中の脂肪を体脂肪といいます。栄養を保存したり保温したりする大事な働きをしますが、体脂肪は増えすぎると肥満になります。
肥満は、まず見た目が良くありません。さらに悪いことは様々な病気を招いてしまうことです。
それでは体脂肪のできる仕組みを見てみましょう。
1.食物は体内でブドウ糖に分解され、エネルギーとして使われる
2.消費されず余ってしまったブドウ糖はインスリンによってグリコーゲンと中性脂肪に変えらる
3.中性脂肪はカラダのあちこちに貯蔵される
これが体脂肪になるということです。
体脂肪は脂肪細胞からできているのですが、これは大きくなると分裂して増え、また大きくなるんですね。たんぱく質でできている筋肉や内臓とは全然違う性質です。
体脂肪は、皮下脂肪と内臓脂肪に大別されます。
■皮下脂肪型肥満
これは、増えすぎると全身がふっくらとしてくる女性に多い肥満型になります。特に下半身が太って下半身肥満ともいわれます。
女性が皮下脂肪型となる理由の一つに女性ホルモンの働きがあります。女性ホルモンのエストロゲンは女性らしい体つきを作る一方、内臓脂肪はつきにくくする作用があるといいます。さらに、女性ホルモンにはプロゲステロンというのもあり、排卵後に分泌されます。これは食欲を促進したり、イライラや肌荒れなどの原因になります。
なのでダイエットに適しているのは、エストロゲンが分泌される排卵前といえるのです。
■内臓脂肪型肥満
増えすぎるとお腹の周りがポッコリする男性に多い肥満型で、上半身肥満とも言われます。
男性ホルモンであるテストステロンは筋肉のある男性らしい体づくりを促進しますが、ホルモン自体は20代をピークに減少傾向をたどります。
年をとるとホルモンの働きが弱まり、筋肉づくりが低下し、暴飲暴食時には余剰エネルギーが内臓脂肪となって貯まってしまいます。また、このテストステロンはストレスにも影響され、ストレスが原因で中性脂肪が貯まることもあります。
リスクが高いのは内臓脂肪型です。内臓脂肪は皮下脂肪より活性度が高くいろいろな物質を分泌してカラダに影響を与えるからです。
でも、簡単にはBMIや腹囲の大きさで判別します。
・男性の場合、BMI25以上で、腹囲85㎝以上、
・女性の場合はBMI25以上、腹囲90㎝以上、
は内臓脂肪量が危険なレベルということです。
BMIは次の式で計算する体格指数です。
BMI=体重(㎏)÷身長の2乗(m2)
他に市販の体脂肪計などで脂肪量をはかることができるからカンタンにチェックできます。
体脂肪がつきやすいカラダの部位は決まっています。内臓脂肪は内臓周りで、皮下脂肪はお腹の周りや二の腕、お尻、太ももなどです。つまり普段あまり使わないところにつきやすいです。よく使うところはつきにくいのですが、もしついていれば相当危険な状況です。
また、内臓脂肪は皮下脂肪と比べ、つきやすく落ちやすいのですが、皮下脂肪はつきにくく落ちにくいです。
肥満は摂取エネルギーが消費エネルギーより大きいことから...
中性脂肪は余剰エネルギーからできます。これは食べ物から得た摂取エネルギーの方が消費するエネルギーよりも大きくなった状態です。
前述のとおり、余剰ブドウ糖はグリコーゲンと中性脂肪に変換されます。
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グリコーゲンは肝臓や筋肉にストックされますが、中性脂肪は体のあちこちにある脂肪細胞の中に貯められていきます。
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エネルギー消費が必要になったときはまずグリコーゲンが消費されます。運動している場合では15分か20分程度で使い切ってしまいます。一方、脂肪細胞の中に入った中性脂肪は取り出すのが難しく使い勝手が悪いものです。
消費エネルギーとは、私たちの代謝という活動です。代謝は大きく3つに大別されます。
■基礎代謝
全代謝の約60%を占めるもので、生きている間ずっと続いている心臓の鼓動、呼吸あるいは肝臓などの臓器が働くためのエネルギー消費をいいます。
■生活活動代謝
全代謝のうち約30%を占めます。運動など自らが活動することで消費されるエネルギー消費です。
■食事誘導性代謝
残りの10%です。これは食べたものを消化吸収するために内臓が活動するときに消費されるエネルギーです。
例えば、いつもの倍運動したとしてても全代謝の30%が倍になるだけです(他の代謝も増えますが、簡単のために無視します)。それで、もし日頃の倍の食事をして倍の摂取エネルギーにすれば、余剰です。つまり、代謝は運動により全体で130%になるのに対し摂取は200%ですから、70%も余剰という計算です。
運動したのに痩せないというのは、こういうことが起こっているからです。
また、基礎代謝は運動しなくても使われます。基礎代謝を筋肉と脂肪の1㎏あたりの代謝量を比べますと、
・脂肪は1㎏あたり4.5kcal/日の基礎代謝量
です。つまり、筋肉をつけると基礎代謝量が増え、代謝全体も増加します。なので摂取と消費のエネルギーをバランスさせるのに筋肉の方が効果が大きいのです。
炭水化物と脂肪の簡単な違い
脂肪は脂肪細胞に中性脂肪の形でエネルギーが貯蔵されているほか、エネルギー効率もいいのです。
つまり炭水化物と脂肪のエネルギーは、炭水化物は1gあたり約4kcalに対し、脂肪は同約9kcalも持っているのです。
それにもう一点は、炭水化物はエネルギー貯蔵をしようとすると水と結びつきます。なので脂肪と同じエネルギー量の炭水化物+水は6倍の重量というように、非常に重くなります。
そうしたこともあり、炭水化物はすぐにエネルギーとして使われますが、脂肪は貯蔵用となるのです。
ただ何度も言いますが脂肪の摂りすぎは体脂肪を増やします。加えて、炭水化物も前述のとおり、分解されてブドウ糖になり、余剰ができるとグリコーゲンと中性脂肪です。なので、両方とも体脂肪の原因になります。
米国の研究では、低炭水化物ダイエットと低脂肪ダイエットは、どちらも減量効果としては変わりがなかったということです。ただ、炭水化物制限は、あまり制限するとカラダが消費するよりも節約貯蓄に励みだし、結局は体脂肪がついてしまう悪循環になります。
体脂肪が原因の病気いろいろ
高血圧 | 塩分取り過ぎばかりでなく、肥満も原因になります。肥満だとインスリンが増えて血管が収縮して血圧が高くなるんです。高血圧はさらに致命的な病気にもつながっていきますので危険です。高血圧は自覚がない場合が多いので、毎年、健康診断でチェックする必要があります。 |
糖尿病 | 高血糖が慢性的になる状態で、網膜症や腎症、さらには神経障害といった合併症まで引き起こします。最近でこそ治療法があるとか言われるようになりましたが、直すのは難しいことには変わりありません。病理原因は、増えた血糖値を抑えるべくインスリンが分解しようとしますが、血糖値が多すぎるとインスリンが間に合わず機能低下です。そして高血糖状態になって糖尿病です。 |
脂質異常症 | 血液中に脂質が増えすぎるために起こる症状で、食べ物に脂質が多すぎたり、脂肪細胞に脂質がたまりすぎたりするためです。脂質異常症自体は自覚が殆どありませんが、動脈硬化などになる怖いものです。血液中に中性脂肪が増えすぎるのが原因と見られていますが、内臓脂肪の場合は危険です。 |
動脈硬化 | 先に述べた病気の結果、動脈の血管が硬くなり、詰まりやすくなるんです。脳で詰まれば脳梗塞、心臓の場合は心筋梗塞です。最悪の場合、死にます。 |
高血圧、高血糖、脂質異常症の段階ではあまり自覚のないメタボリックシンドロームです。ここまで至らない場合でもメタボリックシンドローム予備軍に該当する場合は非常に多くあります。日本人の場合、男性は2人に1人、女性は5人に1人の割合でいると言われます。
さらに病気は続きます。
がん | 肥満が原因となることも認められています。原因はインスリン異常が大きいと見られています。つまり、インスリンが多すぎると細胞自体のライフサイクルを壊し、死ぬべき細胞、特にがん細胞が死なないで生き残るということです。 |
逆流性食道炎、 便秘に |
内臓脂肪が増えすぎると本来の内臓脂肪の働きをも邪魔します。つまり、本来内臓脂肪は内臓を固定する役割を負っていたのですが、増えすぎて内臓を圧迫したりします。胃が圧迫されると逆流性食道炎になったり、子宮などの周りに脂肪がつくと腸が圧迫されて便秘になったり、膀胱が圧迫されたりします。 |
生理不順や不妊 | 内臓脂肪が増えることでインスリンが過剰になり生殖機能に影響を与えるためです。具体的には排卵不順や無月経などの生理不順などが起こるのです。また、卵巣にも影響を与え、卵胞が成長しないまま卵巣にとどまることもあり、不妊の原因にもなるのです。 |
認知症 | アメリカおよびスウェーデンの研究で肥満との関係が研究されています。つまり内臓脂肪の増加でインスリンが増え、脳内にたんぱく質の一種のアミロイドαが蓄積するのがアルツファイマー型認知症ですが、インスリンはその物質の育成を早めるというのです。 |
睡眠時間無呼吸症候群 | 肥満は酸欠をおこし、呼吸に支障をきたすことがあります。内臓脂肪にせよ皮下脂肪にせよ増えすぎるとカラダを締め付け、呼吸の動作を圧迫します。特に首周りは気道を圧迫し、肺呼吸の邪魔をすることが遠因です。さらに進行すれば狭心症や心筋梗塞まで引き起こしてしまいます。 |
内臓脂肪を減らす食事
内臓脂肪を減らすための食事に4つのルールがあります。
- 3食決まった時間にし、間食を摂らない
- よく噛む
- 食物繊維が多い野菜サラダなどを多めに摂る
- 満腹感を感じたら食事を終える
です。
食事は内容が大事です。以下、食品のポイントをまとめました。
食品 | 効果など |
野菜、海藻、豆類 | ビタミンや食物繊維の豊富なので欠かさず食べてください。ただし、芋やカボチャ、果物などは糖質を多く含むのでダイエット中は控えておきましょう。 |
魚類 | 脂質は多めなので控え気味で。魚類以外ではイカや貝類はいいです。脂質が少なく、たんぱく質は豊富ですから。 |
サバやイワシなどの青魚 | 青魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコペンタエン酸)が多く含まれ、体脂肪の増加を抑えるという効果があることで注目を集めています。どちらも不飽和脂肪酸の一種で、体内にたまった中性脂肪を減少させ、内臓脂肪をつきにくくする効果があります。またコレステロールも減らす効果があるので、動脈硬化の予防にもなります。 |
海藻 | 中性脂肪の増加を抑えます。海藻は食物繊維を豊富に含み低カロリーでヘリシーな食べ物です。しかも食物繊維は水溶性食物繊維で胃に長くとどまりますから腹持ちのいいものです。また、腸で分解されると短鎖脂肪酸ができ、中性脂肪の取り込みを抑えたり、エネルギー消費を高めたりします。 |
牛肉 | 部位によって脂肪の量が違います。脂肪の少ない部位は、肩肉やモモ肉。また肩ロースやヒレ肉も少ない方です。なのでこういった赤身肉がおススメです。赤身肉にはL-カルニチンが多く含まれ、これは脂質の代謝を促進し、カラダに脂肪がつきにくくします。 |
ビタミン | 「ビタミンA(カロチン)」「ビタミンB2」「ビタミンC]および「ビタミンD」は主要ビタミンです。それぞれのビタミンは様々な栄養素の消化吸収を促進しますので、健康的に美しくダイエットする上では欠かすことができません。 |
ミネラル | ビタミンとともに5大栄養素となります。ミネラルは鉱物性の無機物ですが、鉄分とかカルシウム分などは欠かせません。主要なミネラルは、「ナトリウム」「カリウム」「鉄」「カルシュウム」ですが、生きていくうえで不可欠な栄養素です。 |
お酒 | 適量に。お酒には食欲を増進させ、また、アルコールが肝臓で分解される際、中性脂肪の合成が行われているのです。つまり、飲めば飲むほど太りやすいカラダになっていきます。 |
高野豆腐 |
高野豆腐には栄養成分がギュッと凝縮されています。たんぱく質や脂質が普通の木綿豆腐より多くあります。この脂質の8割は血管を健康に保つ不飽和脂肪酸です。また、糖質(炭水化物から食物繊維を引いたもの)がご飯やうどんなどと比較して圧倒的に少ないのに、満腹感を得られる食べ物です。 また高野豆腐には大豆たんぱくのひとつの「βコングリシニン」が含まれていて、これが中性脂肪を燃焼させ血液中の中性脂肪を減少させます。また他の大豆たんぱくのひとつの「レジスタントタンパク」も含まれており、これが肝臓での中性脂肪合成を抑え、腸管での脂肪吸収を抑えます。コレステロールも抑えます。このように高野豆腐は痩せ効果がある優れたダイエットフードなのです。 |
おかゆ | 優れたダイエット食品です。おかゆは消化吸収がされやすく、胃腸への負担が少ない食べ物です。また、腸内にとどまる時間も少ないうえ、豊富な水分で腸内をキレイにしますので、中性脂肪を落としやすくします。ただ、2週間程度でカラダが守りに入り痩せにくくなてしまいますので、それ以上継続はしない方がいいです。 |
ダイエット中でも、過度な食事制限は禁物です。特に3大栄養素は欠かさず取りましょう。
太っている人をみると、たいていが摂取カロリーが多すぎます。
なので、必要な栄養素がちゃんと摂れて低カロリーな食材を選べばいいのです。食事を見直して、摂取カロリーと消費の差を少しでも埋めることが脂肪を減らす第一歩です。差を埋める方法には脂肪燃焼サプリなどの方法も有効です。
また調理法によっても同じ食材でもカロリー量が大きく違ってきます。
簡単に言うなら、揚げる>焼く>蒸す>煮るの順番でカロリー量が少なくなります。なので、カロリーを少なくしたいなら煮物を多くとるように心がけましょう。
低炭水化物ダイエットは、中性脂肪を減らす効果が認められています。高BMIの人や糖尿病の人には効果的です。しかしこれもやりすぎると、前述のとおりカラダが守りに入り、痩せにくいカラダになりますので、炭水化物を摂りすぎないよう抑える程度にしている方がよさそう。
脂肪を落とすテクニック
すでに食事については詳しく書いたので、これからは体脂肪を燃焼させるための運動について話します。もし食事制限のダイエットを行うのであっても、並行して運動し、筋肉を鍛えることで代謝を高め、エネルギー消費効率を上げることです。これが成功の秘訣です。
運動と言っても構える必要はありません。
■まるまる30分でなくとも、10分散歩を2回、他に犬の散歩で10分のように合計で30分以上
■通勤などで、1駅手前で降りて目的の次の駅まで歩く(大都市では有効)
■エレベーターやエスカレーターを使わず、階段を使う
■朝の歯磨きのときつま先立ちやテレビ見ながらストレッチなど
など、簡単にできることが色々あります。
例え細切れでも有酸素運動を定期的に行えば脂肪燃焼に効果はあります。手軽な有酸素運動には、先ほど紹介したウォーキングの他、サイクリングや水泳、あるいはダンスといったものもあります。楽しく続けられることが大事です。また一緒にしてもらう方がいるほうが続けやすいです。
ダイエット目的の運動はハードにする必要はありません。むしろカラダに不調がある場合には、その日は休んだ方がいいです。運動時間は先ほどらい30分以上と言っていますが、他に心拍数の上昇で確認することもできます。
目標心拍数=(220-年齢ー安静時心拍数)×(運動強度÷100)+ 安静時心拍数
つまり、前半部分の(220-年齢ー安静時心拍数)×(運動強度÷100)でどれくらい心拍数を増やすかを計算するわけです。最近はスマートウォッチで簡単に脈拍を見れると思います。
有酸素運動の他、筋肉トレーニングも効果があります。手軽にできる筋力トレーニングには、腕立て伏せや腹筋のような「アイソトニック」と、姿勢を変えずに全力でただ押したり引いたりする「アイソメトリック」があります。アイソメトリックは1回10~60秒程度でも効果がありますので、手軽にできるものです。
またアミノ酸ドリンクでも中性脂肪を減らすことは可能です。アミノ酸は酵素リパーゼを活性化し、中性脂肪を分解し、エネルギーに変換します。このとき運動をしていればエネルギーを消費して、中性脂肪を減らすことに効果大です。ただし、運動せずエネルギー消費がなければ元の中性脂肪に戻ってしまいます。
以上のようなことを行えば、その結果は、
・体脂肪の燃焼
・インスリンの働きを改善して脂肪の燃焼を上げる
・筋肉をつけ代謝アップ
・太りにくいカラダをつくる
効果が出てきますので、継続することが大事です。
ここまでの参考文献:
「図解眠れなくなるほど面白い 体脂肪の話」土田隆監修
正しいダイエット(中間のまとめ)
■脂肪は三大栄養素のひとつで大事ですが、摂りすぎで肥満になると様々な病気を招きやすくなります。
■正しい内容の食事で脂肪を減らすことができす。
■ダイエットの効果を得るには食事に加えて運動すること。簡単な有酸素運動や、短時間のアイソメトリックなど継続できるものを選んで実行するのが良いです。
■食事などによるエネルギー摂取と生命維持や運動などによるエネルギー消費をバランスすることが健康でスラリの奥儀です。
■このバランスは一方を大きく変化させて、他方をそれに近づけるようなやり方は危険です。つまり、過食してすさまじい運動とか食事制限して運動など一切しないでエネルギー消費を減らすなどはダメということです。
■サプリメントの利用でエネルギー摂取を減らしたり、エネルギー消費を増やしたりできますから、バランス調整がしやすくなります。
■そして肥満になるやすい生活習慣を改善していけば完璧です。